廃除を含む遺言(遺言文例 79)

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金全部を、長女中村真央(昭和47年5月5日生)、次女宮崎静香(昭和49年6月6日生)、三女田中幸子(昭和51年3月3日生)の3名に、各3分の1の割合にて相続させる。

第2条 遺言者は、預貯金を除く遺言者の有する不動産その他一切の財産を、三女田中幸子に相続させる。

第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、三女田中幸子を指定する。

第4条 遺言者は、長男田中一郎(昭和53年1月10日生)を廃除する。
 2 長男田中一郎は、自営の自動車販売業廃業後、離婚し実家に戻ってきたが、酒とギャンブルに溺れ、遺言者と遺言者の妻に度々暴力を振るうようになった。その結果、妻は平成18年9月1日、暴力に耐えかねて自殺をした次第である。その上、遺言者の家業である菓子の売上金から、金を盗むようになった。犯罪も同然であるが、当人はまったく反省もしていない。
 3 遺言者は、長男田中一郎の自動車販売業廃業時の借金整理として金2千万円を援助した。また、前項の売上金からの盗んだ金は判明しているだけでも500万円に達している。

第5条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
 福岡県久留米市中央町38番地23
 行政書士  宮崎 信幸(昭和33年3月3日生)
 2 遺言執行者に対する報酬は、金50万円とする。執行報酬については、遺言者の有する預貯金から優先的に支出するものとする。

付言 私の育て方が悪かったのだと思います。一郎は末っ子で跡取りとなってほしいと願って甘やかしてしまったのでしょう。これまでどれだけ苦しめられたか分かりません。娘たちにこれ以上迷惑がかからないように、廃除することにしました。万が一、廃除が認められなかったとしても、遺留分相当額以上に援助したことになるはずです。娘たちは、もうこれ以上、一郎に係らないようにしてください。

平成27年5月7日

住所 福岡県久留米市中央町1番地1
遺言者  田中 太郎 


※補足説明 関連遺言 関連遺言

 推定相続人を廃除する内容を含む遺言です。遺言者の死亡後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をすることになります。ただ、廃除はあまり認められにくい傾向にあるようです。よって、廃除だけでなく、遺産分割方法の内容を含む遺言にしておくべきでしょう。

 上の遺言書は、自筆証書遺言の見本です。全てを自分でペンを使って書き、必ず日付を入れてください。印鑑は認印でも構いませんが、実印が良いでしょう。作成後、封筒に入れて封印をし、妻に預けておくと良いでしょう。
 当然、公正証書の原案(下書き)としても利用できます。公正証書遺言が、より安全で安心です。